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青は寒色。時間が過ぎるのが遅く感じられる色。

しかし、人の生の中で、青という時代が過ぎるのはあまりにも早すぎる。

『視点に囚われるな』

高く、もっと高く。見渡せば空も海もどこまでも続いている。

 --限りはあるが果てはない--

人生もまた然り。
恥も外聞もない晒し上げの記録、今ここに。
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桃。
 『というわけで、君は何がしたいかな?』

少年は少し膝を曲げ、目の前に佇む少女の目線にあわせた。
『というわけ』というのは少女の姉が両親ともに出かけたことである。
だから今日一日は少年が彼女の面倒を見ることを任された。

彼らにはほとんど年齢差がない。
彼女の姉が少年と同い年、彼女は2つ年下である。

今日、彼女の姉は数年後に入学するジュニアハイスクールの下見見学に出かけた。
姉は意欲的に勉強に励みたいと言い、両親もそれを希望した。
そうすると近場の学校では色々と不足がある。
それにいい学校はたくさんある。
色々見ておこうと、まだ中学入学まで数年ある今のうちに下見を開始した。

『おねえちゃん…っく』
少年の言葉など聞こえないように、彼女は姉の存在を求める。
必死に嗚咽を堪えながら、数年後にはこの場所からいなくなってしまう悲しみを抑えながら。

『僕はね、よくサッカーボールで遊んでいるよ。いつも皆忙しいって言って来てくれないからさ、一人でリフティングやったり、PKやったり。そのせいか、やたらとボール捌きがうまくなっちゃった。ははっ、体育で先生に褒められたくらいだよ』

そのような少年の言葉は聞こえなかったように、少女は俯いて嗚咽交じりに姉の名を呼び続ける。

すると来客のチャイムが鳴り響いた。
『あれ?誰だろう?ちょっと待っててね』
少年は来客応対のために玄関に赴いた。

ドアを開けて立っていたのは少年の友人二人だった。
脇にサッカーボールを抱えた活発そうな少年と、絵本を抱えたおとなしめな少年だった。

『やぁ君達か。どうしたの?』
『お前が今日、あいつの妹のお守りだって聞いてな』
「俺達も何か手伝えたら、と思って…」

持つべきものは友人、という異国のことわざをこのときは聞いたことがなかった少年だったが、それと同じ気持ちが胸に芽生えた。

少年3人が部屋に入ると少女はまだ俯いて座っていた。
『やぁ待たせたね。僕の友達も君と遊びたいって来てくれたよ!』
『よろしくな』
「こんにちは」

少女はふと顔をあげ、少年達の方を見たが、また伏せてしまった。

『おいこら、挨拶はどうした、挨拶は』
『こらこら、恐がらせないでくれよ』
少女に掴みかかる勢いの少年を後ろから羽交い絞めにして止める。

二人の少年が組み合っているの放っておいて、おとなしめな少年が少女にゆっくりと近づく。
「君、絵本好き?」
膝を折って少女の目線に合わせ、色鮮やかなデザインの本と差し出した。

「一緒に読もうよ」
『…っく』

ゆっくりと、だが確実に少女は頷いた。



『ちぇっ。せっかく俺がボール持ってきてやったのによ』
『まぁまぁ。後で時間あったらサッカーもしよう』


「じゃあ読むよ。桃太郎。あるところに(ry。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯へ行きました。」
『……』
「川の上流のから大きな桃が(ry。うまそうだ、おじいさんと食ろうてやろうと、おばあさんは家へ持って帰りました」
『…』
『待って』
「何だい?」
『それってどれくらいの大きさの桃?』
「赤ちゃんが入ってるくらいだよ」
『良かった、それならおばあさんでもギックリ腰を気にせずに持てるね』
『おとぎ話なんだからそんなこと気にしてやるなよ…』


「続き読むね。イッヒッヒ、でかい桃だ。今すぐこの鉈で、ぺロリ(鉈をなめる音)、真っ二つにしてやるからなぁ!」
『なんかさっきからおばあさん危なくね!?』
「気のせいだよ」
『そう思いたかったけど刃物舐めるのは尋常じゃねぇよ!?』


「続き読むね。中から男の子が出てきました。桃から生まれたので桃太郎と名づけられました。」
『待って』
「何だい?」
『桃から生まれるって生物学的にはどうなんだろう?』
『お前はまた…おとぎ話なんだからな…』
「確かに、俺もそれを不思議に思った。ありえないよね」
『乗るのかよ!その話乗っちゃうのかよ!』
『…お尻、じゃないかな…』

それまで黙って聞いていた少女がおずおずと、恥ずかしそうに声を出した。
『お尻…桃…っは!』
「そうか、桃はおばあさんの尻を暗喩している!しかし高齢出産だといくら小さな農村とは言え、知れ渡るのは恥ずかしすぎる!」
『小さな農村ゆえに確実に知れ渡る…まして田舎だ…人の口に戸は立てられないぞ…!』
「だから、桃から生まれた」
『桃太郎!』
『…気は済んだか?』

「おっと、いつにもなく熱くなってしまった。続き読むね。桃太郎は立派な若者に成長しました。しかし全裸でした。」
『着せてやれよ!』
「桃太郎は言いました。おばあさん、黍団子をお願いします。おじいさんは僕にスーツを」
『成人だからスーツ?』
「桃太郎は鬼が島へ(ry。道中でキジ、サル、犬を黍団子で釣って仲間にしました。」
『待って』
「何だい?」
『またかよ…』
『いくら畜生どもが馬鹿でも団子ではずっと従えさせることは不可能だと思う。』
「一理あるね。じゃあ桃太郎はどうしたんだい?」
『彼は畜生共が組んで自分の首を狙いに来るのを恐れた。だから他に敵を作ってそこに目標を集中させ、力を統一したんだ』
『なんたるせいじてきしゅわん…』
『つまり最初は鬼を敵としていなかった。後付だったんだよ』
「一理あるね」
『ねぇよ!!!!』

「続き読むね。もう最後だけど。そうして鬼を倒した桃太郎は金銀財宝ザックザクで帰りました。めでたしめでたし」
『面白かったねー』
『…』コクリ
『いや、お前らがそれでいいならいいけどよ。』


その晩、姉と両親が帰ってきた。
妹は姉に今日一日がどれほど楽しかったか、どれほど勉強になったかを物語った。
勉強はどこででも出来る、だから行かないで、と懇願した。

詳しく話を聞いた姉は、妹と友人の少年を二人にすることはどれほど危険かを身にしみて理解した。
姉は家を出ることを辞めることを両親に伝えた。

(私が見張っていないと、この子はとんでもない変態になってしまう…!)

悲しきかな、姉の願いは叶わない。
だが妹の願いは叶った。
家族全員で幸せに暮らすというささやかな願いが。


〜参考資料〜
外山滋比古著・『ことわざの論理』
著者不明・『真・桃太郎』
ゆうきゆう・ソウ著『おとなの1ページ心理学』

〜cast〜
俺と俺の脳内友人達
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